インタビュー【学校法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢代表理事 小林りんさん】

2014年8月に開校した「社会に変革を起こせるチェンジメーカーの育成」を理念に掲げる全寮制国際高校インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK https://isak.jp/jp/)の代表理事である、小林りんさんにお話をうかがいました。
この高等学校は、グローバルな社会に変革を起こせるチェンジメーカーを育てることを教育理念に、一学年50人の生徒の内約7割が海外からの留学生。授業はすべて英語で行われ、異なる価値観や考えを認め合い、受け入れ、多様性を尊重しながら、解かれるべき課題を自ら発見し、行動できるような力を養うことを目指しています。
今回は、資金ゼロから14億円を集めて高校を設立し、進み続ける彼女を支えているもの、女性の働き方、更にこれからのビジョンについてのお考えを伺いました。

 「なぜあきらめるのか、わからない!」

-- 開校まで大変な場面(構想当初は資金集めを苦労したことなど)があったことと思います。ご自身もお二人のお子様を育てていらっしゃいますよね。出産や、育児など様々なライフステージ上、自分がやりたいことを後回しにしてしまう女性が多くいる中で、なぜやりきることができたのか教えて下さい。

「なぜあきらめるのかが、わからないです。松下幸之助さんも仰っていますが、成功とはあきらめずに続けた結果です。私はただやり続けたから今があるだけなんですよ。

2008年から2012年は、サマースクールを4人でやっていましたが、皆ボランティアでした。
産休で会社を休んでいる人や、会社の夏休みを利用して手伝ってくださった人もいました。その頃は手弁当でやっていたわけです。」

右から3人目が小林りんさん 右から、守随智子、川合みゆき、一番左が執筆者の篠田寛子

右から3人目が小林りんさん
右から、取材に伺った守随智子、川合みゆき、一番左が執筆者の篠田寛子

-- サマースクールを始めてから徐々に資金が集まっていき、開校へとつながっていくわけですが、ボランティアでやっていた頃どんな想いがあったんですか?

「日本の教育は変わらなければならないとの想いですね。多様性への寛容力、課題を見つけ解決していく力、リスクをとる力を備えた、グローバルな人材の育成が必要だという、皆共通のビジョンに向かってやっていました。」

-- 子供が小さいからと言ってできないことはないわけですね?

「その方の環境にもよりますね。手伝ってくれる人がいるかどうか。

ただ、私は、女性は起業に向いていると思います。なぜなら、組織のトップですと、時間を自由に作りやすいですよね。出産や育児、介護などのプライベートのこともこなしながらも働きやすく自分で決められます。

だから、女性がトップの組織はいいと思いますよ。そういう配慮のできた会社となりますし、トップが休みを取っていれば、社員も産休や育休を取りやすいですからね。」

-- 先程も赤ちゃんを抱っこした男性教諭がいらっしゃいましたね。

美術クラスで着物の柄を描く生徒たち

美術クラスで着物の柄を描く生徒たち

「ご夫婦で教師の方々がいらして、交代で育児されていますね。当校は、スタッフも含めて様々な形態で働いていただいています。
多様性という意味のダイバーシティは国籍や性別という捉え方をされることが多いですが、一人ひとりの個性の違いもダイバーシティの要素だと思います。
スウェーデンでは、育児休暇を男性も女性も三ヶ月取らないと、育児手当がもらえないそうです。それぐらいしないと日本も浸透しないかもしれませんね。」

-- 起業は、始めることも大変ですが、事業を継続していくことが大切だと思います。そこには何が必要だと思いますか?

「変革をし続けることだと思います。当校もユナイテッド・ワールド・カレッジ(※1)の指定校になろうと今努力をしています。指定校になれば、世界中から選抜された高校生が入って来られるようになりますし、先生の採用も充実していくと考えています。
教育も10年、20年経つと変わっていきます。常にアンテナを張って変化し続けることが必要だと考えています。」

-- 最後に、これからがんばっていこうと思っている女性達に一言エールをお願いします。

「私の座右の銘に、フランスの哲学者のアランが言った
『悲観は気分によるものであり、楽観は意思によるものである』という言葉があります。

夫が手伝ってくれないから、環境が整っていないからと言うのではなく、自分の意思で楽観的に考えることで乗り越えられることもあると思います。

アーリー・スモールサクセス(Early Small Success)、つまり小さな成功を示すことで、周りの理解も得られやすくなります。私は挫折もたくさんありましたが、いつも楽しく考えるようにし、目の前に来た困難はチャレンジだと思っています。困難があるからこそ、そこから学ぶことがあります。

それから、若い起業家に多く見られるのですが、こんなに良いことをしようとしているのに理解してくれない、わかってくれないと言われる場面を何度か見ています。
でも、会ってくれた人、話を聞いてくれた人は、自分の時間を使っているのですから、まずは会ってくださってありがとうですよね。そういう意識がないと起業家としては失格だと思います。自分の事業が正しいと主張する前に、謙虚な心を持ちたいなと思っています。」

※1: UWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ、本部:ロンドン)は、世界各国から選抜された高校生を受入れ、教育を通じて国際感覚豊かな人材を養成することを目的とする国際的な民間教育機関。現在までに、イギリス、カナダ、シンガポール、イタリア、アメリカ、香港、ノルウェー、インド、オランダ等にカレッジ(高校)が開校されています。

この後学生さん達とも話をさせていただきました。ハキハキとした受け答え、自分の意見をきちんと話し、まっすぐこちらを見る姿勢、大変清々しいものでした。この学生さんの姿が、小林りんさんの想いを表しているように感じました。
女性がトップであることをむしろ利点と考え、困難を全てチャレンジと捉える彼女の姿勢は、これからがんばっていこうと思っている女性達に力強い応援になるのではないでしょうか。

ISAK校舎玄関 写っているのは、この取材後話をさせていただいた学生さん達

ISAK校舎玄関にて
写っているのは、この取材後話をさせていただいた学生さん達

 

<執筆者:篠田寛子  取材日:2015年11月6日>

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