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vol.3【ヴィクトリア朝の「自助の精神」とは?】

一昔前、『自助論』という本が日本で流行しました。

1859年にイギリスで出版されたサミュエル・スマイルズの著作『Self-Help』の抄訳本です。

みなさんも「天は自ら助くる者を助く」という序文の一節を耳にしたことがある方もいませんか?

 

成功者たちの伝記を集め、自分で身を立てることの重要性を説いたこの本が初めて日本に紹介されたのは、明治時代初期。

イギリス留学を経験した中村正直が翻訳し、『西国立志編』という名で発売された当時、大ベストセラーとなりました。

この本が説く「自助」とは、まさしく『Self-Help』が出版されたヴィクトリア朝社会が、人々に求めた時代精神。

中産階級の男性たちは勤勉と努力によって富を築き、社会的地位を確立させるため、厳しい競争社会に身を置かなければなりませんでした。

 

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サッチャー元英国首相は、このヴィクトリア朝由来の「自助の精神」に価値を見出していたと言われています。
“The waste of a country’s most precious assets—the talent and energy of its people makes it the bounden duty of Government to seek a real and lasting cure.”

(国にとって最も重要な資産、つまり人々の才能やエネルギーを無駄にすることが、本当の、そして永続的な解決策を見つける上で政府の重荷となるのだ。)

 

「ゆりかごから墓場まで」という英国政府従来の政策に反し、小さな政府の実現に向けて改革を実行したサッチャー氏は、雇用問題に対して自発的な活動と博愛主義を奨励しました。

彼女が信念として掲げていたのは、国は貧しい者に手を差し伸べる福祉国家としての体面を保ちつつ、国民は自分の努力で問題解決するのが好ましいというまさに「自助の精神」でした。

 

この「自助」という言葉は、自立した個人が自ら考えて行動し、「互いに助け合うこと」を意味しました。

ヴィクトリア朝時代、数々の組織的な慈善団体が存在し、活動していたという史実がそのことを裏付けます。

日本を席巻した「自己啓発ブーム」では、「自助=自己責任」という誤解された図式が正当化されたこともありました。しかし、自助とは本来「一人ですべて行い、責任を負う」という意味ではなく、個人の努力を基に相互に扶助するという「互助の精神」を大切にすることだったのです。

 

2016年、女性が「その個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍すること」を目的とした「女性活躍推進法」が成立しました。

まさに国と企業と個人が「互助」するための法律です。

「一億総活躍」が推進される現代は、女性にも自助が求められる時代と言えるでしょう。

 

ヴィクトリア朝の「自助の精神」は、女性たちの「才能やエネルギーを無駄にする」ことなく、「個性と能力を十分に発揮」するために必要な価値観ではないでしょうか。

 

[出典] マーガレット・サッチャー・ファウンデーション、Margaret Thatcher Foundation (Speech to Conservative Party Conference, 1980 Oct 10)

http://www.margaretthatcher.org/

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