11/27(月)14:00-16:00 名古屋駅近くの安保ホールで行われました「建設産業女性活躍セミナー」に参加してきました。
50名の席は満席で、作業服を着た女性達も参加されていて、関心の高さがうかがえました。
建設産業では、従事している方々の高齢化に伴い、本格的に女性活躍推進が必要と判断し、働き方改革、待遇改善など業界上げて取り組んでいると冒頭の説明があった後、基調講演に入りました。
1.基調講演(1)有限会社ゼムケンサービスの代表取締役 籠田淳子氏
「建設業を女性の一生の仕事に~男女共創の幕開き」
北九州市で社員8名の内、6名が女性という構成の会社。男性が多数を占めるこの業界で、女性の視点を経営戦略として活かし、5年で売上倍増となった理由をお話しされました。
● 子育てとの両立やワーク・ライフ・バランスを大切にした働き方をすることがむしろ、女性の生活者としての視点や細やかな感性を磨く。
● 家庭を大切にすることが、社会に目を向けることにつながる。
工事現場では、男女ペアでワークシェアリングをしており、両立しやすい働き方の工夫もしているとのことです。
以前勤めていた会社では女性は現場に出してもらえず、現実の状況がわかりにくかったが、今では現場に出ることで有意義な仕事につながっている。一旦家に帰って家事をこなしてから、再度会社に戻って仕事を続ける。
など、社員のリアルな体験や両立の工夫も紹介されました。
2.基調講演(2)国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 調整係長 中野次郎氏
「最近の建設産業政策について」
人口減少や高齢化が進む中、建設産業は他産業と比べても高齢者の割合が高く、10年後には大半が引退すると見込まれている。又、20代の従事者も少なく、若年入職者の確保と育成が喫緊の課題。
国土交通省と建設業5団体で策定した目標として、「女性技術者・技能者を平成26年時には10万人だったところを平成31年には20万人に増やすことを目指す」と掲げているが、平成28年度で10万人とほぼ横ばい。目標の達成は厳しいと言わざるを得ない。
このような現状の中でも、社会保険加入も進み、少しづつ働き方改革や女性活躍推進の事例が出てきている。
建設現場では、若い年代はひよっこと捉えられがちなため、キャリアを公平に可視化しようという動きが始まっている。技能者の資格等の情報や現場での就業履歴等を業界統一のルールでデータ化蓄積し、技能者の処遇改善に活かすことにつなげる。この「建設キャリアアップシステム」は、平成30年秋からの運用開始を予定している。
3.パネルディスカッション
「建設産業において、さらなる女性の入職お呼び定着を促進するためには」
・菊水化学工業株式会社 法務審査部 係長 児山奈央美氏
・三井住友建設株式会社 土木本部次長 執行役員 柴田雅俊氏
・日特建設株式会社 藤代祥子氏(技術系総合職)
・藤原工業株式会社 藤原永知子氏(施工管理)
・矢作建設工業株式会社 人事部人事課 主任 村瀬真紀氏
・徳倉建設株式会社 総務部 係長 村田史子氏
・株式会社横井業務店 渡邉裕子氏(左官)
・株式会社加藤建設 和田智恵氏(技術職)
コーディネーター:籠田淳子氏
印象的だった言葉は、
・当社の女性活躍推進はボトムアップ型。女活=人活(女性が働きやすい会社は全員が働きやすい):菊水化学工業 児山氏
・女子小中学生に向けた建築現場見学会を開催。その頃から意識付けを図る。:三井住友建設 柴田氏
・まだまだ現場には女性トイレが無い所もある。:日特建設 藤代氏
・(一社)建築設備技術者協会 設備女子会で横のつながりを強化。ロールモデル集を作成。:藤原工業 藤原氏
・当社では自分が育休復帰第一号なので、会社と話をしながら両立できる働き方を考えた。:徳倉建設 村田氏
・高校生の段階では左官業という職業のことはほとんど知らない。子供達にこういう仕事があること、活躍している人達のことをPRする必要がある。:横井業務店 渡邉氏
・パートやアルバイトの時から軽く入れるのではなく、入ってみたらおもしろいと感じてもらえるような工夫が定着につながる。
・入職時には女性には危険な仕事ではないかと心配されたが、実際に入ってみたら、安全には二重三重に非常に気を使っていることがわかった。
・そもそも3Kという悪いイメージがあるので、改革しているところをどうアピールするかが大切。
・両立の働き方は一人ひとり家庭の事情も違うし、要望も違う。面談してその人に合った働き方を考える必要がある。
・お茶出し、掃除当番はまだ女性の役割とされている現場もある。男性側が女性が共に働くということを受け入れる必要がある。
・定着のためには、一人が一人を育てていくことでつながっていく。
・前例が無いと言われることがあるが、誰かが始めなければ前例はできない。
・様々な会社が組み合わさって建築物は出来上がるので、業界全体で女性活躍推進に取り組む意義がある。
・仲間がいれば、辛くて辞めようという気持ちも和らぐかもしれない。だからこそ会社を超えて意見が言い合える仲間づくりをしていこう。
他の業界と違って、一つの完成物に、多数の企業が関わるために、一社だけ女性活躍推進をがんばっていてはいけないという意識が強い気がしました。
その取り組みは、日本全体の女性活躍推進のボトムアップにつながっていくと感じます。
女性が少ないからこそ、危険な現場と捉えられているからこそ、改善していく知恵が湧きます。マイナスをそのまま放置せず、プラスにする力に女性達が関われることで、更にモチベーションが上がり、プラスのスパイラルになって業界全体が活性化していく。
現在はそのエネルギーをじっくり溜めているが、一気に爆発する時も近いのではと思わせるような団結力が印象に残りました。