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【番外編】世界を旅した女性たち:イザベラ・バード

これまで様々な形で活躍した女性たちを紹介してきましたが、母国を離れて海外で知見を広め、その後に目覚ましい活躍を遂げた女性たちが存在しました。

今回は、国境を越えた文化交流の掛け橋となった女性の先駆けともいえる、「レディ・トラベラー」を取り上げます。主人公は、19世紀英国の女性探検家、イザベラ・バード。女性には貞淑さが求められたヴィクトリア朝の時代に、英国を飛び出し、世界中を旅した彼女の冒険と旅行記をご紹介したいと思います。
 
牧師の父の下に生まれたイザベラは、幼い頃から病弱でした。20代になると医師からの勧めで、療養を兼ねて7ヶ月間、アメリカとカナダに滞在します。この体験がきっかけとなり、彼女は終生、世界を旅するトラベラーとなりました。その後、ハワイをはじめ、モロッコ、オーストラリア、チベット、マレーシア、そして中国や朝鮮など、世界各地を巡ります。大自然を突き進み、険しい山を登ったり、インドで病院を建設したりするなど、立ち寄った場所で活動的に過ごし、自分の目で見たものや感じたことを記録に残していきました。
 
イザベラは47歳の時に開国間もない明治日本を訪れ、当時西洋人の男性でさえも立ち寄らなかった北日本の地域を旅します。しかも、西洋人と行動を共にせず、同行したのは通訳を任された日本人のみ。人々が訪れない場所を選択し、日本人の暮らしを間近で観察しました。各地をつなぐ鉄道や情報網が存在しなかった時代に、未知の土地を旅するその行動力には驚かされます。
 
彼女が綴った旅行記Unbeaten Tracks in Japan(「日本奥地紀行」)には、一人の英国人女性からみた日本の生活様式に加え、北海道に住むアイヌの人々の文化や風俗について描かれており、西洋人の視点から当時の日本人の生活を知る貴重な資料となっています。中には日本人の容姿や住居環境への悪口ともとれる描写がありますが、日本の優美な自然や日本人の礼儀正しく親切な人柄について称賛されています。特にアイヌの人々との暮らしに関する部分には、“hospitality”という単語が繰り返し登場します。
 
“Their mode of living you already know, as I have shared it, and am still receiving their hospitality. “Custom” enjoins the exercise of hospitality on every Aino.”

Isabella L. Bird, Unbeaten Tracks in Japan


(彼らの生活様式はすでにご存じの通り、共有している所ですが、いまだに親切なおもてなしを受けています。「風習」により、すべてのアイヌ人におもてなしをすることが課せられているのです。)
 
詳細な観察と冒険心、そして道中で出会った人々への感謝の気持ちに満ちたイザベラの旅行記を読むことで、改めて明治期から変わらぬ日本人の気質を理解することができるかもしれません。

 

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